らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

飽きたらやめようGalois理論(12)―有限体を考える

抜群に胡散臭い。
「$\mathbb{F}_{p^n}$ は任意の $n$ 次既約多項式 $P \in \mathbb{F}_p[X]$ の stem field かつ splitting field である。」なんて本当か?
という感じになるのが代数学の嫌いなところではある。ごく一般に扱う体は $\R$ や $\C$ といった標数0の素直な(?)ものばかりなので、上記のようなことが俄かはに信じがたい。「任意の函数が三角函数の(無限)和で表現できる」ということと同等に胡散臭い。

定理の主張を検証するために、 $n$ 次既約多項式を2個以上持つような手頃な $\mathbb{F}_p[X]$ を探したい。

$K = \mathbb{F}_2 = \Z/2\Z$ を考えてみよう。$X^2 + 1$ は... 残念、可約である。 $X^2 + 1 = (X + 1)^2$ が成立するので、根として1を持つ。気色悪いけど仕方ない。ともかく簡単な形の既約多項式にならないので諦める。
$K = \mathbb{F}_3 = \Z/3\Z$ を考えてみよう。$X^2 + 1$ は既約である。だが、 $X^2 + 2$ は可約である。やめ。
$K = \mathbb{F}_5 = \Z/5\Z$ を考えてみよう。$X^2 + 1$ は可約だが、 $X^2 + 2$ と $X^2 + 3$ が既約である。それぞれsplitting field内で分解すると $(X - \sqrt{3})(X - 4\sqrt{3})$ と $(X - \sqrt{2})(X - 4\sqrt{2})$ となる。超簡単な既約多項式が2つ見つかったからこれを材料にしよう。
さて、先の定理の主張はこれらのsplitting fieldが一致する、つまり $\sqrt{2} \in \mathbb{F}_5[\sqrt{3}]$ を主張している。これは気持ち悪いー。
だが、計算すると残念ながらこれは正しい。 $(2\sqrt{3})^2 = 2$ であるから $2\sqrt{3} = \sqrt{2}$ となるのだ。念のため、 $\sqrt{3} \in \mathbb{F}_5[\sqrt{2}]$ も確認したいが、 $(2\sqrt{2})^2 = 3$ なので、 $2\sqrt{2} = \sqrt{3}$ である。
ということで、 $\mathbb{F}_{5^2}$ というものは、 $X^2 + 2$ についてのstem filedかつsplitting fieldであると同時に $X^2 + 3$ についてのstem filedかつsplitting fieldでもあるということだ。

もうちょっと複雑な $\mathbb{F}_5$ の2次の既約多項式としては $X^2 + X + 1$ がある。これは $\mathbb{F}_5[\sqrt{2}]$ で分解すると $\big(X - (2+2\sqrt{2})\big)\big(X - (2+3\sqrt{2})\big)$ となる。結局 $\{a + b \sqrt{2};\ a,b \in \mathbb{F}_5\}$ しか出てこない。なんてこった/(^O^)\