らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(39)―具体例

(1)大活躍の $\Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ 。 $X^2-3 \in \Q(\sqrt{2})$ は既約なので、 $[\Q(\sqrt{2},\sqrt{3}):\Q] = [\Q(\sqrt{2})(\sqrt{3}):\Q(\sqrt{2})] [\Q(\sqrt{2}):\Q] = 4$ である。
$\Q(\sqrt{2}+\sqrt{3}) \subset \Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ であるが、 $\Q(\sqrt{2}+\sqrt{3})$ がproperな部分体であれば $\Q$ 上の拡大次数は2である。しかし $\Q[X]$ の2次方程式の根で書けないのでproperではない。よって $\Q(\sqrt{2}+\sqrt{3}) = \Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ である。
実際、 $(\sqrt{2}+\sqrt{3})^2 = 5 + 2\sqrt{6}$ であるので、 $24 = \big( (\sqrt{2}+\sqrt{3})^2 - 5\big)^2$ によって、 $(\sqrt{2}+\sqrt{3})^4 -10 (\sqrt{2}+\sqrt{3})^2 + 1 = 0$ というように $\Q[X]$ の4次方程式の根である。
よって、 $\sqrt{2}+\sqrt{3}$ は $\Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ の原始元である。

(2)次に $K = \mathbb{F}_p$ とする。 $K(X,Y)$ を $K(X^p,Y^p)$ の拡大とみる。 $x = X^p, y = Y^p$ とおくと、 $K(X,y) = K(x,y)[T]/(T^p - x)$ と書けるので、 $[K(X,Y^p):K(X^p:Y^p)] = p$ である。同様に、 $K(X,Y) = K(X,y)[T]/(T^p - y)$ と書けるので、 $[K(X,Y):K(X:Y^p)] = p$ である。よって、 $[K(X,Y):K(X^p:Y^p)] = [K(X,Y):K(X:Y^p)] [K(X,Y^p):K(X^p:Y^p)] = p^2$ である。
$X \in K(X,Y)\backslash K(X^p,Y^p)$ は $T^p -X^p \in K(X^p,Y^p)[T]$ が最小多項式であるが、被約多項式の次数が1であるので準非分離的である。非分離次数は $p$ である。
このケースでは原始元定理の前提を満たさないので、原始元が存在するとは言えない。実際このケースでは存在しないことを見よう。
任意の $\alpha \in K(X,Y)\backslash K(X^p,Y^p)$ をとる。 $\alpha = \sum k_{ij}X^i Y^j$ と書くと、 $\alpha^p = \sum k_{ij}^p (X^p)^i (Y^p)^j \in K(X^p,Y^p)$ であるので、 $[K(X^p,Y^p, \alpha):K(X^p,Y^p)] = p$ である*1。よって、いかなる $\alpha$ に対しても $K(X,Y) = K(X^p,Y^p, \alpha)$ とならないので、原始元は存在しない。

*1:1より大きく $p$ 以下の拡大次数だが $p$ は素数なので $p$ が拡大次数になる。