らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(14)―根は区別できるか?

かくして、 $\mathbb{F}_5[X]$ の既約多項式 $X^2 + 2$ の根 $\sqrt{3}$ は $\mathbb{F}_5[X]$ の代数的閉包 $\bar{\mathbb{F}}_5$ からとってくることができる。相変わらず標数は5なので、$\mathbb{F}_5[X]$ も $\bar{\mathbb{F}}_5$ も $\Q$ の部分体にはならず、従って $\sqrt{3}$ も特に $\sqrt{3} \in \Q$ というわけではない。なかば抽象的な $\bar{\mathbb{F}}_5$ の元 $\alpha$ であって $\alpha^2 = 3$ となるようなものである。
さて、そうすると $\sqrt{3} \in \bar{\mathbb{F}}_5$ と $-\sqrt{3} \in \bar{\mathbb{F}}_5$ は共に $X^2 + 2$ の根であり区別がつかない。$\C$ における $\sqrt{-1}$ と $-\sqrt{-1}$ の区別のようなものだ。
これについては最初に $\alpha \in \bar{\mathbb{F}}_5$ をとった時点で「名前」として $\sqrt{3}$ を与えたのだとすれば、 $-\alpha$ が $-\sqrt{3}$ になるものとして理解できる。