らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(13)―根体再考

根体再考。
$\mathbb{F}_5[X]$ の既約多項式 $X^2 + 2$ の根 $\sqrt{3}$ はどっからとってくるんだ?と。
$K \subset L$ で別の安全な体に包まれている場合は、しれっと $L$ からとってくる!と言えば良い。なので、 $\R$ とか $\Q$ で遊ぶ分には $\C$ からとってくることにしとけば良いだろう。
では、 $\mathbb{F}_5[X]$ を包む安全な体は...?
わぁぁぁ(((;゜Д゜)))*1

ここで抽象的な根体を “丁寧” に見る。「代数概論」より。

Prop

任意の $K[x]$ の既約多項式 $f(x) = x^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_1x + a_0$ に対して、その根体は存在し、 $K$-同型の差を除き一意的に定まる。

proof

剰余環 $K[x]/(f) \simeq K + Kx + \cdots + Kx^{n-1}$ は体になる。右辺の $x$ の名前をつけかえて $\alpha$ としてみよう。 $\varphi:K[x]/(f) \overset{\sim}{\to} K + K\alpha + \cdots + K\alpha^{n-1}$ である。 $M := K + K\alpha + \cdots + K\alpha^{n-1}$ と書くことにする。
ところで、この $\alpha$ については $f(\alpha) = 0$ が成立する。 これは、 $F \in K[x]$ とすると、 $F = f\cdot q + r,\ \mathrm{deg}(r) < \mathrm{deg}(f)$ と書けて、 $\varphi: \bar{F} = r \mapsto r(\alpha)$ という対応であったので、 $0 = \varphi(0) = \varphi(\bar{f}) = f(\alpha)$ より分かる。(なお、 $\alpha \in M $ に対応する $\varphi:K[x]/(f)$ の元は $[x \mapsto x]$ である。)
この特別な “数” $\alpha$ に対して、 $K + K\alpha + \cdots + K\alpha^{n-1}$ は体 $K(\alpha)$ になっているので、 $K[x]/(f) \simeq K(\alpha)$ は根体である。
一意性については、飽きたらやめようGalois理論(8) - らんだむな記憶で触れた通りである ${}_\blacksquare$

こうして、抽象的な体 $K$ と $K[x]$ の既約多項式 $f$ から抽象的な根体 $K[x]/(f)$ が得られた。
$K$ の代数的閉包については $K$ をひたすら拡大していって最後にZorn補題でしあげる。
一旦代数的閉包 $\bar{K}$ が得られれば、 $K \subset \bar{K}$ であるので、 $K[x]$ の既約多項式の根をとってくる場合には $\bar{K}$ からとってきていることにすれば良い。

*1:代数的閉包からとってくりゃーいいのだが、代数的閉包の証明でがすがす抽象的な単拡大するので、単拡大程度については見ないと厳しかろう...