らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(3)―Eisensteinの既約判定法

Eisensteinの既約判定法、懐かしい。とか書きつつも常にステートメントは忘れる...。

●具体例 $X^{100} - 2$の$\Z[X]$での既約性:
可約とすると、$X^{100} -2 = Q(X)R(X)$と書ける。2を法とする、つまり、$\mathbb{F}_2[X]$で考えると、$X^{100} = \bar{Q}(X)\bar{R}(X)$となるので、$\mathbb{F}_2[X]$では、$\bar{Q}(X) = X^k,\ \bar{R}(X) = X^\ell$となる。よってもとの$\Z[X]$で考えると、$Q(X) = X^k + \cdots + 2c_1,\ R(X) = X^\ell + \cdots + 2c_2$となるので、$X^{100} -2 = X^{100} + \cdots + 4c_1c_2$となる。右辺の定数項は4の倍数であるが、左辺のそれはそうではないので矛盾。よって、$X^{100} - 2$は$\Z$上で既約である。

これを一般化すると、

Eisensteinの既約判定法

$P \in \Z[X],\ P(X) = a_n X^n + a_{n-1}X^{n-1} + \cdots + a_0$とする。
また、ある素数$p$が$p \!\!\not|\, a_n$であって、$p\,|\,a_i,\ 0 \leq i < n$、そして$p^2 \!\!\not|\, a_0$を満たすとする。
この時、$P$は$\Z[X]$で既約である。

証明

$\Z[X]$で$P(X)=Q(X)R(X)$と分解するとする。$\mathbb{F}_p[X]$で考えると、
$\bar{a}_n X^n = \bar{Q}(X)\bar{R}(X)$となるので、元に戻して$\Z[X]$で考えると
$Q(X) = b_k X^k + \cdots + p b_0,\ R(X) = c_\ell X^\ell + \cdots + p c_0$となる。
よって、$P(X) = a_n X^n + \cdots p^2 b_0 c_0$となり、定数項について右辺は$p^2$の倍数であるが、左辺のそれは仮定より$p^2$の倍数ではない。よって矛盾である${}_\blacksquare$

...自分の中で細かいところに目をつぶってえいやで分かったつもりになっているが*1、具体例から入って「拡張する場合にまったく同じ理屈が成立するようにしれっと仮定を盛り付ける」形で定理が書き下されるのは分かりやすい。

各種の定理に見られる謎ぃ仮定は、根底にはもっとシンプルな具体例やロジックやサンプルがあって、それを「拡張する場合にまったく同じ理屈が成立するようにしれっと仮定を盛り付ける」として、その盛り付けが綺麗になるように更に十分条件を工夫して最終形にしたけど、どうしても残っちゃう技巧的なものがその「謎ぃ」感覚として残るのだと思う。
Eisensteinの既約判定法だと、係数に共通する素数$p$を見つけて、$\mathbb{F}_p[X]$に落として最高次で自明な分解して戻すという単純な流れに持ち込みたいのが本質ということだな。$\sqrt{2}$の無理数であることの証明ともなんとなく似ている。

$\sqrt{2} = q/p$と既約分数で表現できるとすると、両辺を2乗して移行すると$2q^2 = p^2$となるので、$p$は2の倍数だが、そうすると両辺を2で割ると$q^2 = 2r$となり$q$も2の倍数となり前提の既約性に反するというものだ。
一般化を試みると$\sqrt{n} = q/p$から始めて$nq^2 = p^2$から$n \,|\, p$が従うケースでは同じ論理が適用できる。そんなことがさくっと言えるのは$n$が素数の場合だ。
ということで、「$p$を素数とする時$\sqrt{p}$は無理数である」ということが拡張形として言える。

オマケとして、$X^{100} - 12$を考えると、$\Z[X]$でこれは既約であるが、素数2に着目すると冒頭の議論が破綻してしまう。3に着目すると適用できる。
仮定を満たさないケースでは $X^{100} - 1 = (X - 1)(X^{99} + X^{98} + \cdots + X + 1)$ や $X^{100} - 4 = (X^{50} - 2)(X^{50} + 2)$ などが考えられる。

*1:$X^{100}$ の $\mathbb{F}_2[X]$ での分解で低次の項が出るパターンを何で即座に否定できるのか、とか。これを避けるなら $\Z[X]$ 内でベタに分解して各係数を評価したほうが安心感はある。→ 飽きたらやめようGalois理論(15) - らんだむな記憶