らんだむな記憶

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テンソル代数と擬微分作用素の代数

普遍性云々は置いておいて、ベクトル空間 $V$ を用いて、その双対空間 $V^*$ 上の $k$ 重線形写像のなす空間 $L_k(V^*)$ としてテンソル
\begin{align}
\otimes^k V = \overbrace{V \otimes \cdots \otimes V}^k := L_k(V^*)
\end{align}

を定める。このテンソル積は $V$ の元の “掛け算” として見ることができる。但し、この時点では積についた代数構造になっていないので直和をとってテンソル代数を考える。
\begin{align}
\R \oplus V \oplus (V \otimes V) \oplus \cdots \oplus (\otimes^k V) \oplus \cdots = \bigoplus_{k=0}^\infty (\otimes^k V)
\end{align}

これと似たような考え方に擬微分作用素の代数があるように思う。$\Omega \subset \R^d$ を開集合とし、その上の $m$ 階の擬部分作用素のなす空間を $\Psi^m(\Omega)$ とする。適当に $\Psi^{-\infty}(\Omega)$ の作用素を加えることで properly supported にできることから擬微分作用素の積を自由にとれるものとする。この時、$P \in \Psi^m(\Omega)$, $Q \in \Psi^{m^\prime}(\Omega)$ に対してその積は $QP \in \Psi^{m + m^\prime}(\Omega)$ となるので擬微分作用素の空間も積で閉じていない。ところが、すべての階数の擬微分作用素の合併
\begin{align}
\Psi^\infty(\Omega) = \bigcup_{m=-\infty}^\infty \Psi^m(\Omega)
\end{align}

を考えると、これは積で閉じて代数をなす。
このように積は考えられるものの積で閉じていないベクトル空間の族がある時、それらすべての和をとることで代数を得ることは基本的な考え方であろう。