らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

圏論(6)

[Steve Awodey本]
1.4 Examples of categories

7. 前順序(preorder)とは集合 $P$ であって反射的かつ推移的な二項関係 $p \le q$ を持つものである: つまり$a \le a$ および $a \le b$ かつ $b \le c$ の時 $a \le c$ が成立するようなものである。どのような前順序 $P$ も次のやりかたで category と見做すことができる。つまり、$P$ の元を objects と考え、唯1つの arrow を
\begin{equation}
a \to b \hspace{1em}\text{if and only if}\hspace{1em} a \le b \hspace{5em} (1.2)
\end{equation}

ととる。$\le$ の反射性と推移性によって実際に category となるのである。

―――

前順序という表現は全順序(total order)と混同するし、typoのもとなのであまり好きではない。どうやら全順序は線型順序(linear order)とも呼ぶようだが、こちらのほうがイメージ的にしっくりくるかもしれない。

さて、反対称性(antisymmetry)、つまり $a \le b$ かつ $b \le a$ の時 $a = b$ が成立するような条件を仮定しない状態での「順序」的な例を考えると、どうも頭がかたくてなかなか思いつかない。
ざっと手持ちの本を見ても、その本の目的としてはあまり興味のない対象なのかさらっと定義が書いてあるだけのものしか手持ちにはなかったようだ。そういえば、公理論的集合論の本は買わないな。

ということであれこれ考えて、非常に雑な比較をしてみようと考えた。実際気付くと同様の例がggればすぐに出てくる。

まず、集合 $S = \{1,2,3,\cdots\}$ を用意する。別になんでもいいけど一応自然数風味にしてみる。 $S$ の部分集合すべてを $P$ とする。カッコつけるなら、冪集合 $2^S = P$ ですよとか言えばいいだろうか。*1

次に、$p \in P = 2^S$ に対して、$\#(p) := \text{number of p's elements}$ という記号を導入する。そして、$P$ における前順序 $\le_P$ を
\begin{equation}
p \le_P q \iff \#(p) \le \#(q),\quad \text{for}\ p,q \in P
\end{equation}

で定める。右辺の $le$ は普通の数に対する不等号である。$\le_P$ の反射性と推移性はすぐ分かる。反対称性が成立しないことはほぼ明らかだ。$\{1,2\} \le_P \{3,4\}$ かつ $\{3,4\} \le_P \{1,2\}$ が $\le_P$ の定め方より従うが、集合として $\{1,2\} \neq \{3,4\}$ であるからだ。

この前順序集合 $\{P, \le_P\}$ を category として解釈する場合、

  • objects: $p, q, r,\cdots \in P$

として、

  • arrows:

\begin{equation}
p \to q \iff p \le_P q \iff \#(p) \le \#(q),\quad \text{for}\ p,q \in P
\end{equation}

と形式的に書き直せば良い。
派生させれば幾らでもこのような例は作れる。objects を「ある小学校の1年生の生徒」とし、$A \to B$を「AはBのクラスメート」とすれば良い。AとBがクラスメートかつBとAがクラスメート(おっと自明か...)だからといって、AとBは同一だ、とはなるまい。推移性も自明だ。

$A \to B$を「AはBが好き」とかすると大変なことになる。反射性は「わたしはわたしが好きー<3」ということだし、「AはBが好き」かつ「BはCが好き」の場合に「AはCが好き」という推移性が成立するなんて恋愛天国だと修羅場しかなくなってしまう。どちらもなかなか難しいだろう。ただ、その世界にAさんしかいなくて、自分スキーならいけそうだ。しかし残念ながら通常はケンアクにこそなれケンにはなれないようだ。

*1:ここで冪集合は集合と呼んで良い対象なのか?という疑問が頭をかすめたが公理論的集合論に触りたくないのでggる程度で済ます。公理的集合論 - Wikipediaうむ。OK、セフセフである。Zermelo-Fraenkel Axioms (ZF) においては、「冪集合公理」としてアンタッチャブルなお約束として「集合なんですよ?」としているので問題なし。勿論、普段どういう公理系を選択して「集合」などという黒魔術用語を口にしたり記述したりしているかは考えたことなどない!Zermeloの選択公理かーすごいねー、Zorn補題と同値なんだね、すごいねーと有難がって中身には触れずに利用するだけである。決して、玉が詰まった "沢山" の袋のの中から同時に1つずつ玉を取り出すことができるところの選択函数云々には触れない。触れてはいけない。