らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

局所正則性(2)

局所正則性 - らんだむな記憶の後半でもにょもにょ記載した内容がもう少し分かった。
Amazon.co.jp: Semilinear Schrodinger Equations (Courant Lecture Notes): Thierry Cazenave: 洋書の「2. The Linear Schrödinger Equation」のコメント「2.7. Comments」に重要な情報が載っている。

REMARK 2.7.8. In addition to the smoothing effects of Section 2.3 and 2.5, a third kind of smoothing effect was discovered.

というものだ。第1のものは$L^p$の意味での平滑化(特異性の緩和)、第2のものは遠方減衰性の強いものを滑らかな函数にうつすというFourier変換のような性質のもののようだ。($\mathcal{F}: \langle \xi \rangle^2 \widehat{u}(\xi) \mapsto \langle D \rangle^2 u(x)$によって、遠方で急減少する函数と滑らかな函数が相互にうつりあう。他の例では、Paley-Wienerの定理によると台がコンパクトな函数は解析的な函数にうつる。)
$L^2$な初期値から時間発展で$H_\mathrm{loc}^{1/2}$が得られるようなものを第3のものと呼んでいる。

この第3の平滑化についてはConstantin-Saut, Sjölin, Vegaが独立に発見したとある。1987~1989年の頃だ。
とすると、Reed-Simonの4巻本は1970年代の本だし、CFKSも1987年の本で年代的にはピッタリ過ぎてまだ上記の結果は反映できていなかっただろう。ということでこれらには載っているようには見えない。
証明の過程で擬微分作用素を使う手法もあるようだが、熊ノ郷先生の本は1974年、M.E.Taylor先生とF.Trèves先生の本も1980~1981年の本なのでこの話題が載っているわけもなく。
更なる発展としては、Kato-Yajimaの結果があると書いてあるだけあって、谷島先生の本ではこの話題が扱われているという感じのようだ。
Constantin-Saut氏の論文についてはpdfで入手できるようで、

だ。斜め読みで「あぁ、なるほど」と雰囲気が分かる類のものには見えないのが残念...。

上記で触れた熊ノ郷先生の擬微分作用素の本はいつの間にかPOD版で入手できるようになったようだ: 擬微分作用素
和書で古典的で本格的な入門書はこれ1冊とも言えるので貴重であろう。議論を優しくするために大域的な設定であるので、局所化が必要な場合別途他の本をあたるべきであることと、二重表象のところの議論がややこしくてちょっと辛いことが玉に瑕だが。(洋書では、見たところ二重表象で扱いたい部分の議論はFourier積分作用素(の特別な場合)で扱っているようで、こちらのほうが見やすいようには思う)