らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

Galois理論(53)―ガロア対応の全単射性が崩れるケース

Galois理論(48)―ガロア対応補足 - らんだむな記憶で、無限次拡大の場合にはガロア対応の全単射性が崩れるというRemarkを残していた。これを見ていこう。

Galois理論(52)―有限体の場合のガロア群の計算例 - らんだむな記憶では、有限体の有限次拡大の場合を見たが、今度は $\bar{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p$ を考える。
Frobenius写像 $\mathrm{Fr}: x \mapsto x^p$ で生成される無限巡回群を $\langle\mathrm{Fr}\rangle$ とする。$\langle\mathrm{Fr}\rangle$ による $\bar{\mathbb{F}}_p$ の固定体を考えると、p乗したら自分に戻ってくる元がそうであるので、 $\bar{\mathbb{F}}_p^{\langle\mathrm{Fr}\rangle} = \mathbb{F}_p$ となる。
これを踏まえると、有限次拡大の場合と同様にガロア対応の全単射性があるとすれば、 $\mathrm{Gal}(\bar{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p) = \langle\mathrm{Fr}\rangle$ ということになるが、実際には一致しない。

これを見るために、 $\mathrm{Gal}(\bar{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)$ の構造を調べよう。
$\mathbb{F}_p \subset \mathbb{F}_{p^2} \subset \cdots \subset \mathbb{F}_{p^{2^n}} \subset \cdots$ という拡大体の列を考え、 $L = \bigcup_{n} \mathbb{F}_{p^{2^n}}$ と置く。
$L \subset \bar{\mathbb{F}}_p$ であるので、準同型写像の拡張*1を考慮すると $\mathrm{Gal}(L/\mathbb{F}_p) \hookrightarrow \mathrm{Gal}(\bar{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)$ である。「ガロア対応の全単射性が成立する」と仮定すると、 $\mathrm{Gal}(L/\mathbb{F}_p) \hookrightarrow \langle\mathrm{Fr}\rangle$ となり巡回群の部分群として $\mathrm{Gal}(L/\mathbb{F}_p)$ も巡回群のはずであるが、そうではないことが示されれば「ガロア対応の全単射性」が否定されることになる。

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この辺は「有限次元Banach空間は反射的であり、双対空間の双対が自分に戻ってくるという性質をもって、Banach空間とその上の線型汎函数のなす空間が対応付くのに対し、一般に無限次元の場合にこの反射性が崩れ、双対の双対が自身にならない―例えば $L^1(\R)$ ―」のような感覚に陥る。
$C^*$-代数で言えば、非可換幾何とGelfand duality(2) - らんだむな記憶で触れたように、可換な場合には良い感じの双対性がある。「C*-algebras and operator theory」で言うと Theorem 2.1.10であろうか。更にTheorem 3.4.1によって、Hilbert空間とその上の有界線型汎函数のなす $C^*$-代数が対応付く。
Hilbert空間や $C^*$-代数には有限次のガロア拡大と通じるものがある、かもしれない。