らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

機械学習のための関数解析入門

内田老鶴圃/書籍詳細/機械学習のための関数解析入門 ヒルベルト空間とカーネル法
こんな本が最近出版されたらしい。今んとこ認識している範囲では、カーネル SVM を理解するくらいしか函数解析の出番はないと思っているけど、確かにその道のために通常の函数解析の本はあまりに分量が多いと思うし、カーネル法の本は既にある程度函数解析を理解していることを前提にしているように感じられるのでゴールをカーネル法にしているような本があっても良いのかもしれない。
目次を見るに、ぎりぎり汎函数が出てくるか出てこないかくらいで作用素は出ててそうにないが、そういえばカーネル法でもこれといって作用素は登場していなかったかもしれない。キモは「(高次元の)再生核ヒルベルト空間に埋め込めば、内積の計算が安いコストでできるので、Schmidt の直交化法などを含め通常の線形法がそのまんまの形で低コストの計算量で利用できますよ」ということなので、この “カーネルトリック” の上では作用素は確かに不要そうだ。リプレゼンター定理の説明にも登場しなかったであろう。
函数解析の本として有界・非有界を問わず作用素の話がスッパリ落ちているのは目玉が飛び出そうな勢いではあるが、そういった方向性もあるのだろう。
偏微分方程式につなぐにしても、作用素作用素環論につなぐにしても、量子力学につなぐにしても作用素の扱いは避けられないのでこの本は本当に self-contained な本なのだろうと思うけど、膨大なテキストが既に存在する函数解析の分野に新しい 1 冊を加える場合に、切り口や視点を変えたらまだ新しい書籍を投じられるのだなと感じた。