らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

モーメント

力のモーメント, 慣性モーメント。結局よく分からなかった。
モーメント - Wikipediaによると、
\begin{equation}
\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{A}
\end{equation}

のように表現できるやつのことらしい。力のベクトル$\boldsymbol{F}$の場合の$\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F}$が力のモーメントということらしい。これがまた慣性モーメントになると色々形が変わってまた分からなくなってしまうのだが。
慣性モーメント - Wikipediaでは
\begin{equation}
I = \int_V r^2 dm
\end{equation}

が連続体の慣性モーメントだそうだ。これは2次のモーメントとでも呼べば良いのだろうか?
なかなかタチが悪いことに、これを一般化して数学では
モーメント (数学) - Wikipediaにあるように、函数$f$の原点の周りのn次モーメントを
\begin{equation}
\mu_n^{(0)} := \int_{-\infty}^{\infty} x^n f(x) dx
\end{equation}

などと定めるようだ。($f$が有界変動函数の場合に$f(x)dx = \mu(dx)$というStieltjes測度を考えて$\int x^n d\mu$ と書けば慣性モーメントの一般系だろぅ?と考えられる... はず)

さて、Amazon.co.jp: Functional Analysis (Classics in Mathematics S.): Kosaku Yosida: 洋書のp.107に「モーメント問題」という問題が記述されている。

問題

与えられた複素数列$\{ \alpha_j \}_{j=1}^\infty$に対して、
\begin{equation}
\int_0^1 t^{j-1} m(dt) = \alpha_j, \quad j = 1,2,\cdots
\end{equation}

を満たすようなBaire測度$ m $を求めよ。

というもののようだ。吉田先生の本では、Hahn-Banachの定理の応用で解いている。似たようなもので、線型汎函数の値から汎函数積分作用素としてその測度を求めてしまおうというRiesz-Markovの定理の証明にHahn-Banachの定理を用いているのが、Amazon.co.jp: I: Functional Analysis, Volume 1 (Methods of Modern Mathematical Physics): Michael Reed, Barry Simon: 洋書のp.353 Theorem S.5だ。

Theorem S.5

$L \in (C_\mathbb{R}[0,1])^*$とする。この時、唯1つの有界変動函数$\alpha$が存在して、以下を満たす。
\begin{equation}
L(f) = \int_0^1 f d\alpha, \quad {}^\forall f \in C_\mathbb{R}[0,1]
\end{equation}


Hahn-Banachの定理は、Banach空間の上の有界線型汎函数が十分に沢山存在することを保証する定理として活躍するものであるが、このように幅広い応用も持っている。

なんでこんなこと考えるんだ?というのもあるのだが、Moment problem - Wikipedia, the free encyclopediaによると、確率論において、指定された期待値, 分散などなどを持つような確率測度が存在して、かつ一意に定めるか?という疑問から発生しているようだ。
統計学入門 (基礎統計学) | 東京大学教養学部統計学教室 | 本 | Amazon.co.jpのp.104を見ると、以下のような例がある。ぴったりとモーメント問題に対応するわけではないが、何かのヒントみたいな感じなるだろう。

共通一次テストの得点分布では、平均と分散しかわかっていない。

こういう場合にテストの点数を確率変数として、その変数がある範囲に入る確率を求めたいといった場合だ。確率測度が求まれば、そういったものも求めることが可能になる。確率測度を特定するには$\alpha_j$に相当するデータが少なすぎるわけだが、一方で詳細に依存せずに求まる関係式としてChebyshevの不等式がある。かなりざっくりとしか情報は得られないが、力強い不等式である。(ざっくり感ある不等式だけにその導出も実にざっくりしたものである。いかにざっくりしているかの描写は確率・統計入門が面白いように感じる)
確率論 - らんだむな記憶で書いていた気がしたが書いてなかった。

Chebyshevの不等式

$$P(|X - \mu| \ge k \sigma) \le \frac{1}{k^2}$$

実際には、この形よりもっと一般的な形のやつを考えると、すごいざくっとした証明が見えてくる。震え上がるほどざくっとしているのだ。


さて、正直なところ唐突に「モーメント問題というやつを考えます」とか言われても「も、も、モーメント!?」となる上に「ゑ?力のモーメントとも似ても似つかないが、何がモーメント??」などとなった記憶しかないのだが、とにかく前述のような形の積分のことをモーメントなどと呼んでいるようだ。紛らわしい...。