らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

圏論(15)とスローガン

前回示した Theorem 1.6 はちょっと嬉しくないことを誘発する。 ―――

Remark 1.7.

このこと*1から集合と写像のなす ``具体的な'' category の素朴な概念についてまずいところがあることが見えてくる: 一般に category はその objects と arrows としては特別な集合だとか写像だとかを持たないのであるが、一方ですべての category *2 はそういったものと同型*3 ということになってしまうのである。
故に、そういった category が持ち得る特別な性質としては category 的にはつまらないもの、例えばどうやっても arrows には影響を及ぼさないような objects の特性などしか残らない。(実数の構成を引き合いに出せば、Dedekind 切断によるものと Cauchy 列による構成との間の差異のようなものである)

――― 「arrows には影響を及ぼさない」ことがつまらないものであるかのような記述だが、そこの感覚はまだよく分からない。1.4 Examples of categories 6. にちょっとしたスローガンがある。

category 論の1つの重要なスローガンを述べよう。

本当に重要なのは arrowsだ!

なので categories の間の arrows または ``mappings'' も見ていくべきだろう。 ``categories の homomorphism''*4 のことを functor (函手)*5 という。

という下りがあって、functor の定義が始まる。covariant functor (共変函手) は 2.7 Hom-sets までおあずけで、contravariant functor (反変函手) は Definition 5.26. までと随分お預けだ。普通の本よりはまったり導入か?とにかく arrows は重要らしいので、それに影響を及ぼさない objects の特性はつまらないものなのだろう。
閑話休題。本文はここから先の展望みたいなものが少し書いてある。よく分からない部分もあるのでいまは省略する。そして ―――

寄せ集め $\{ f \in \mathbf{C} \,|\, \mathrm{cod}(f) = C \}$ が実際に集合であることを保証するために $\mathbf{C}$ が arrows の集合を持つという条件が必要となる。 ―― これについては Section 1.8 でもう一度触れることにしよう。

――― あぁぁ、公理論的集合論のにおいがしてきたー…。それはさて置き、やっと次回あたりで opposite category*6 に触れることができそうだ。

*1:Theorem 1.6

*2:Theorem 1.6 の仮定を満たすような、であるが。

*3:category としては区別のできない同じもの、ということ。

*4:圏の準同型とか圏準同型とか訳すのもアリか?

*5:functionが「かんすう」だから、functorを「かんしゅ」にして響きを似せたのか?どうもこの訳語はしっくり来ない。徒に難しそうなイメージを醸しているような...

*6:逆圏。或は dual category (双対圏)