らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

ブラケット記法

Dirac のブラケット記法というと $\bra{\phi}$ とか $\ket{\phi}$ とかのアレである。組み合わせると $\braket{\phi | \psi}$ とか書くと思う。これを数学のコンテキストで書くと

\begin{align*}
\braket{\phi | \psi} = \int \overline{\phi(x)} \psi(x) dx
\end{align*}

になるだろう。antilinear をどっちに取るかは本質的ではなく、単に $L^2$ 内積である。これを砂川本では

\begin{align*}
\phi = \begin{pmatrix}
\phi(q_1) \\
\phi(q_2) \\
\vdots \\
\phi(q_\infty)
\end{pmatrix}
\tag{2.3}
\end{align*}

という表記を導入しているのが少し面白かった。何遍か見返してしまう内容だが、

なお本当は、変数 $q$ は $-\infty$ から $+\infty$ までの連続的な値をとるから、(2.3) の表式は正確ではないが、問題の本質を直感的に把握できるように、(2.3) ではあえて $q$ を不連続な数の組 $(q_1,q_2,\cdots,q_\infty)$ で表している。

というのを読みつつもう一回くらい眺めると「あぁ、うん。」という気持ちになれた。色々思うことは残るがこれで “線型代数” になるし、メンタルモデルとしては結局こういう解釈をして読み進めている部分だったので、いっそ可視化されると潔くて、いわゆるデルタ函数を飲み込むような気持ちで進められる。一旦飲み込んでしまえば違和感はもはやなくなる。

J. J. Sakurai の本では速攻でブラケットに入っていたけどあまりちゃんと読まなかった。確かいきなり「Hilbert 空間」を持ち出していたと思うが、そっちのほうが von Neumann による基礎付けとも整合性がとれると思う。Hilbert 空間の言葉だけなら低コストで導入できるので、Dirac の記法をさっさと内積マッピングして Hilbert 空間の言葉で語った方が無限次元のものを頑張って有限次元の言葉っぽくごまかして語るよりスッキリするように思うのだが・・・と思いつつ、量子力学の本を毎回眺めてしまう。

数学的なアプローチを知らないままで量子力学の本を読むと、無限次元行列としか思えないものが有限ランクの行列として扱われて、しかも(離散)固有値がどうとかがふわっと出てきてしまってなんかとても気持ち悪そうに思う。調和振動子のようにスペクトルが離散固有値になるケースを扱っている上ではまだ “線型代数” で誤魔化せるが、そこから先がつらそうだ・・・。