社長、ウチにもCTOが必要です|日経の本 日経BP を読んだ。
「いろは化学材料株式会社」の社長はコマツ 会長 + 富士フイルム CTO + 東レ CTO + コニカミノルタ 取締役会議長 + パナソニック CTO + オムロン CTO + 味の素 常務 + 本田技術研究所 元主席研究員みたいなキャラなのでやたら複数のドメインに詳しい。その社長さんをメンターとして主人公がメンティーとして新規事業を考えるストーリー。
経営者は危機感を持て
- フィルム → デジカメ → iPhone
- HDD レコーダ → YouTube
- カーナビ → スマホ
- 明日にでも市場を奪われるかもしれないという強い危機感
- 競い合う方向が急に変わる
- コマツのコムトラックス
ほらを吹け(夢を語る)
- 新規商品開発に POS データは使わない
- POS データは過去のもの
- 梅やおかかのおにぎりの情報が出てきても他店のホットドッグの情報は出てこない(身内の序列)
- 新商品は新しい価値の創造
- 社会の課題を解決する将来像を描く
- 「〜でシェアトップになる」は欲
- 「世の中がどうなったらいいか」が夢
- 社会的課題を解決した将来像を描いてから自社の持つ商品やサービスを考える
- GE(ゼネラル・エレクトリック)の創業者の一人エジソンの「世界がいま本当に必要としているものを創る」はいまでも守られている
- 社会の動きを見る
- ほらい吹く = 夢を語る
- 仲間を増やす
- 多少の大風呂敷を広げる
- 自分を追い込む
- 小さな実績で信頼を勝ち取る
- 説得力
- 妥協してはいけないところはトコトンこだわる
顧客の気づいていない価値を創造する
- 顧客価値の最大化が重要。技術はそのための手段
- 顧客は意外に自分たちの課題の本質は分かっていない and/or 課題に気づいていない
- 「顧客を深く理解し、顧客でさえ気がついていない価値を創造しろ」(コマツ)
- 顧客の隠れたニーズ => 顧客の現場に行く
- ホンダの三現主義
- 現場、現物、現実
- 自分が実際に触れたものや見たものでなければ信じない
- ホンダのワイガヤ
- 三日三晩泊まり込みでトコトン議論することで本質をつかむ方法
理系と文系の良さを併せ持つ
- 経済学は本来は数学的知識が必要
- ネット情報を分析して株を売買するプログラムの出現
- フィンテックの出現 => 金融も理系の知識が必要に
- ビットコインなどの仮想通貨 => 理系の世界
- 理系はデータに基づく理論展開はうまいが、その枠から離れない、領域の細分化の結果、何をやりたいかを聞かれても答えられない。足元ばかり見ている。
- 文系は先を見通す力では優れている。データを軽んじすぎる。イメージ先行。
- 両方のバランスが大事
- アメリカでは専攻を決めるのは大学 3 年から。
- ドイツのデュアルシステム(学校教育 + 職業訓練)
「やれそう」「やるべき」「やりたい」
- 新規事業を始める条件。経営者が判断する条件
- 良いものが開発できたとして販路や開発リソースはあるか?
- 富士フイルムでは「やれそう」「やるべき」「やりたい」の 3 つを確認
- 「やれそう」: これだけで事業を始めていることが多い
- 「やるべき」: 社内ノウハウの適合性、ニーズ、価値の創出の継続性、事業で勝てる条件が整っているか
- 「やりたい」: 一番重要。「やめろ」などの障害が多発する。起業家精神のようなものが必要。チャレンジャーである必要がある。担当者の本気
- 東レでも研究担当者がわくわくしているかを重視
虎の子の技術を見極める
- 企業が生き残るために必要なこと = 虎の子の技術(コア技術)
- オープン&クローズ戦略
- 虎の子の技術は賢治しつつ、仲間を集めて価値を提供
- プラットフォームをオープンして、仲間を増やして、デファクトスタンダードを確立して、利益を稼ぐ
- PC: Intel と Microsoft
- 携帯電話: Qualcomm と Google
逆 T 字型で事業を横展開
- 逆 T 字型 = 深く掘り下げて一つのことを極めたら、それを横に展開する
- 一つのことを極めているから他の分野でも勝負ができる
- 富士フイルムは写真フィルムから化粧品や医薬品に手を出した
- 技術的類似性に気づいていた技術者がいた。フォルムの厚さは 20 ミクロン、人の細胞の大きさも 20 ミクロン。写真の色が褪せるのは酸化が原因、肌のシミやシワの原因も酸化が原因。コラーゲンは写真フィルムの主成分、再生医療に繋がったのもコラーゲン
- アメリカの 3M は不織布を開発したが用途が見つからず事業終了寸前に。クリスマスプレゼント用で需要に火がついて普及
- 一つのことを掘り下げる方法
- 社員を信じて自由を与える
- 好きなことを好きなだけ掘り下げられる制度
- アングラ研究(東レ)
- 15% カルチャー (3M)
- 制度のキモは社員の自由から生まれた成果を事業化へと引き上げる仕組み
- 上司の見る目。芽をつぶしがち
- 根本的には経営者の問題
知っている人は知っている
- 複合的な技術が絡む(自社、自社以外の企業、団体)ビジネスに入り込むには、仕組みを提供するエコシステムに入り込む必要
- そのビジネスがターゲットとする共通の課題を持つことが重要
- リーダーになりたいならその課題を解決しようと最初にメンバに働きかける必要
- 虎の子の技術以外はパートナー企業に任せればいい。但し、虎の子の技術については何が求められることになるか知っていないとならない
- Web の情報は表面的(契約上出せない、真似されると困る、情報を更新して掲載する暇がない)。企業マッチングの会社
- 技術の有無だけでは決められない(どこかで無理が生じる)。オムロンは課題解決についての共感を求める。
失敗を重ねて早めに失敗の芽を摘む
- 世界的にシステム開発のトレンドはアジャイル開発
- 2000 年代の家電は What は分かっていたので、How を考えれば良かった。現代は What が分からない。
- パナソニックも数年前に試作品をパートナー企業に見せるように。ダメなら出直す。
- GE のファストワークス。失敗を重ねて、早めに失敗の芽をいっぱい出してスピーディに完成度を上げる。
- 「リーン・スタートアップ」の著者エリック・リースに協力してもらった
- GE の CEO: 「企業は、10 年、15 年のサイクルでゼロから作り出すつもりで企業文化を刷新するべきだ」
- 東レの炭素繊維も最初は航空機用を目指していたが課題があったので、まずはゴルフクラブや釣竿の素材として実用化。技術を磨いて航空機用に使われるようになった。基礎研究(1961 年)から商業生産まで 10 年。50 年をかけて強度は 3 倍に
価値の分かる顧客を見つける
- 意見を言ってくれるパートナーや厳しい目で批判してくれる最初の顧客が重要
- 技術者が顧客に会う機会を作ることも重要。
- 顧客が何を欲しがっているかを感じ取れる
- 顧客に寄り添うことで研究者のやる気を起こさせる
- need ではなく wants を知る
イノベーションはゼロから 1 を生み出すこと
- イノベーションや研究はゼロから 1 を生み出すこと
- 偶然を待つわけにはいかないので、イノベーションを起こす仕組みが企業には必要
- 「イノベーションの成功率はいいとこ 10% くらいしかない」(ホンダ技研)
- イノベーションは辺境から生まれる
- 超継続(東レ)
- 材料の研究は粘りがイノベーションを生むので、先が見えない、出口の分からない研究を根気よく続けるのが得意な気質を持つ日本人研究者が粘り強く研究できる環境
- 「重大な過ちはマネジメントが独裁的になり、責任を委譲した部下に仕事のやり方まで事細かに指示を与えることだ」(3M)
- 管理職がイノベーションを妨げてはいけない
- 3M のイノベーションを起こすための風土
- 失敗を許容する
- チャレンジすることが評価される
- 人を助けると評価される
- アメリカ人でも挑戦する人は限られる。スタンフォード大でジョブズが何度公演しても何もしない学生がほとんど。
- 企業はチャレンジする環境を整えることに必死
- 自力でのイノベーションではなく買収によって得る方法もある
- パナソニックも必要な技術は買収して手に入れてきた
- 自社開発にこだわりすぎない
成功に近づいたら、それを失敗とは言わない
- 人は変化を求めない
- 評価の仕組みがチャレンジすることを促すようにできていなければ誰もチャレンジせず、ゼロから 1 を生み出すこともない
- 減点主義だとやる気になれない
- 「成功に少しでも近づいたら、それを失敗とは言わない」(富士フイルム)
- 経営者はもっと大きな目標を持て
- そうすれば小さな失敗は気にならなくなる
- 目標管理シートに固執すると結果主義に陥る、難易度はそれぞれ違うので目標達成だけでは評価できない(東レ)
- ジャンルトップ戦略で社員のモチベーションを上げる(コニカミノルタ)
上司は自分
- 部下の提案に「いくら儲かる?」と聞く上司はダメ
- アイデアを出す気が失せる
- 多少のことは言われても気にせずやり通すくらいの変わり者である必要性
- 新規事業や新しい企業が次々と現れるには 3 つの風土が必要
- 高い理想を持ったリーダーが生まれる風土、信頼で結ばれた人間関係が築かれる風土、多様性を認め合う風土
- 最後は自分: 「上司は自分」
- 大きな時代感を持つことが大事
大きな時代感を持て
- 炭素繊維は必ず必要になるという大きな時代感
- 火薬・化学品の時代からバイオ技術に時代を経たデュポン
- 売上の半分を占めていた石油会社のコノコを売却。年間売上は 450 億ドル → 247 億ドル。未来に必要のない事業を徹底して仕分け、売却
- 富士フイルムが売っている製品は “信頼”
リーダーは七転び八起き
- 将来像を描いて、社内に浸透させる上でぶれてはいけないポイントは 3 つ
- CEO と CTO のベクトルの整合性がとれていること = 会社の向かう将来と技術の発展の方向性が合っているか?
- ある程度先の話を捉えている将来像に、足元で行っている短期的な事業活動が向かっているかどうか?
- 経営陣の考えが現場に正しく伝わっているか?