AI導入の教科書 - 秀和システム あなたの学びをサポート!
読んでみた。ビジネス、コンサル寄りの内容。AI ありきという内容ではなかった。“とりあえず AI” とか “なんとなく AI” という状況になった場合、或いは “深層学習やったらいいんじゃ?” という状況の時にまず立ち止まって考えるのに使えそう。
また、「○○を買ったからうまく活用して」という購入ありきの物事にも適用できる内容だろう。ビジネス課題は何で、それに対する KGI は何で、それに対する KPI は何かといった KGI/KPI 分解をした際に、どこの部分を何で解決したいか、それがどのくらい費用対効果があると見積れるか?といったことを考えた場合に、本当に AI や○○が必要であるのかは疑問であるといったことである。
ステップ
- ステップ 1: ビジネスの課題を設定する
- ステップ2: 使えるデータを選定する
- ステップ3: 統計の手法を選定する
- ステップ4: AIの使い方を考える
- ステップ5: 機械学習プログラムの作成
- ステップ6: 本番適用
- ステップ7: 再学習
- ステップ8: モデルの調整
指標
- 指標1: AI精度の目標設定
- 指標2: 必要なデータの確保
- 指標3: 運用コスト
- 指標4: AI導入をうまく高めるための人材
- 指標5: 財務系指標
- 指標6: AI再学習のサイクル
- 指標7: 業務への適合性
気になった箇所
- p.16 AIは課題解決手段のひとつ
- いきなり AI でというのはやはり違う気がする。現在使える技術の中で課題を解決できる手段が AI しかなく、この弱い AI が本質的なキーになる場合のみ使えば良いだろう。
- p.27 AIの得意・不得意を把握する
- 何でも解決する魔法ではない。結局は ニューラルネットワークの数理的構造 (4) - らんだむな記憶 でしかないので、限界はある。
- p.37 担当者を悩ませる「わからない」の壁
- 何ができるのかわからない
- やりたいことが漠然としている
- 関係者でやりたいことが統一できない
- どんなデータが必要か?がわからない
- 経営者と担当者の意思疎通ができない
- 作ってみたが、運用ができない
- ROIが出るかわからない
- AI部門の人材はどうすればよいのか?がわからない
- p.110 AIの精度だけを最終目標にしない
- そもそも精度を求めると厳しい。精度が出ないなりにどうにか活用できる可能性を残したい。
- p.115 学習させてはいけないデータを定義する
- ノイズを放り込むとおかしなことになることは、ニューラルネットワークの数理的構造 (4) - らんだむな記憶 で、期待しないデータを放り込めば放り込むほどに係数がぶれてしまって、最終的に本来ありがちな入力データに対する推論結果が悪くなるであろうことからも想像できる。
- p.112 AI導入の各ステップと必要な役割
- ビジネスアナリスト (= データアナリスト + ビジネス)
- データアナリスト
- データマネージャー
- p.138 納得感の高いAIから導入する方法も
- 使ってもらえない AI は学習データが追加で得られないので、再学習も捗らず、精度が出ないうちに賞味期限切れとなる。
- p.155 AI導入のために物理組織を作ってはいけない理由 & p.157 バーチャル組織の作り方
- 物理組織を作る際にエース人材を集めがちだが、「この部門からは不要だったね」という人材が出てくると、帰る場所も出世のチャンスも失ってしまっているという可能性があり、担当者にとってのリスクが大きい。
- p.168 どこまで外注化する?
- 企業によって得意な部分・不得意な部分がある。DL 専門だと DL 手法に寄せてしまうかもしれない。
- 全部できるという企業もいるかもしれないが、その場合は、認識が甘いか器用貧乏か。
- p.191 KPIを整理して最初のステップからやり直す
- 何をしたいのかをはっきりさせる。
- p.195 当初の課題を変更
- より本質的な課題を見出すことで良いアプローチが得られることがある。例えば当初は入力が音声であったものを入力を文字列にすることでより良いアプローチが見つかることもある。
目的に必要な精度が出せる最小のデータ数やモデル複雑度を見極める部分の話や、データアナリストを育成するより、最新の研究を学んだ大学生を採用するほうが早くて安いといった話もなるほどと思う。確かに、時間もあって研究設備もあって、論文を読む機会もあり、トレンドに通じている大学生のほうが早いかもしれない。昨今は若年層の基礎的な IT リテラシーや AI リテラシーの向上は目覚しいと感じる。
また、「データアナリスト」は大学生でもできるスキルセットであり、それだけではバリューにならないとのこと。他の記事でも 10 年後には IT エンジニアの基礎的なスキルセットの 1 つになるとか、ボタンポチポチになるんじゃないか?っていう記載もあるし、長期的には稼げなくなる見通しの記述が多い。AI は一つのスキルととらえて、他のスキルも併せて持っておくことが生存戦略的には正しいのだろう。
クラウドを使う場合は、そのクラウドの固有のサービスに依存すると closed になった場合に厳しいといったことも書かれている。SageMaker などの AWS のマネージドサービスで固めた場合、確かにちょっとしたリスクは感じるが、提案のあった Docker についてもコンテナ技術特有のややこしさもあるし、単純にそちらが良いかは難しい。他、AWS と GCP や Azure のうちから 2 つくらいピックアップして二段構えで同等のサービスを構築する案はなかなか興味深いが、GCP や Azure に通じたエンジニアがどれくらい市場にいるのかよく分からないし、コストも倍増しそうなのでよく考える必要はありそうだ。(本当に AWS のマネージドサービスが終了する可能性がどれくらいあるのか?という)