らんだむな記憶

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Galois理論(63)―線型無関連な拡大

線型無関連な拡大について見ていく。Galois理論(62)―合成拡大 - らんだむな記憶の記号をそのまま使う。

Theorem (線型無関連)

$K \subset L_1, L_2 \subset L$ を代数拡大とする。以下は同値である。
(a) $L_1 \otimes_K L_2$ は体である。
(b) $j$ は単射である。
(c) $x_1,\cdots,x_n \in L_1$ が $K$ 上線型独立 $\Rightarrow$ $x_1,\cdots,x_n$ が $L_2$ 上線型独立
(d) $x_1,\cdots,x_n \in L_1$ および $y_1,\cdots,y_m \in L_2$ が $K$ 上線型独立 $\Rightarrow$ $x_i y_j$ が $K$ 上線型独立
また、$L_1/K$: 有限次拡大の時には以下とも同値である:
(e) $[L_1 L_2:L_2] = [L_1:K]$ (言い換えると $[L_1 L_2:K] = [L_1:K] [L_2:K]$)

この時、 $L_1$ と $L_2$ は $K$ 上線型無関連であると言う。

proof

(a) $\iff$ (b) 合成体 $L_1 L_2 = j (L_1 \otimes_K L_2)$ を思い出す。 $L_1 \otimes_K L_2$ が体の時、 $x \neq 0$ に対して $j(x) = 0$ とすると、 $j(x^{-1}) j(x) = j (x^{-1} x) = j(1) = 1$ より矛盾するので、 $j$ は単射である。逆に $j$ が単射の時、$j^{-1}$ によって、体 $L_1 L_2$ の像として $L_1 \otimes_K L_2$ が得られるので、これも体である。

(b) $\Rightarrow$ (c) $x_1 \otimes 1,\cdots x_n \otimes 1$ は $L_2$ で線型独立である。実際: $\sum_{1\le i \le n} \alpha_i (x_i \otimes 1) = 0$ とすると、 $\sum_{1\le i \le n} (x_i \otimes \alpha_i) = 0$ である。 $L_2$ は $K$-ベクトル空間であるので(一般に無限)基底 $\{y_k\}$ を持つ。個々の $\alpha_i$ に対して、 $\alpha_i = \sum_{k:\text{finite}} c_{ik} y_k$ とすると、 $\sum_{k:\text{finite}}\sum_{1\le i \le n} c_{ik} (x_i \otimes y_k) = 0$ となる。 $L_1 \otimes_K L_2$ において $\{x_i \otimes y_k\}$ は一時独立であるので、 $c_{ik} = 0$ である。よって $\alpha_i = 0$ であることが分かった。
次に、 $\beta_i \in L_2$ に対して $\sum_i \beta_i x_i = 0$ とする時、 $j$ の単射性により $0 = \sum_i (x_i \otimes \beta_i) = \sum_j \beta_i (x_i \otimes 1)$ を得る。よって、 $\beta_i = 0$ である。

(c) $\Rightarrow$ (d) $\sum_{ik} a_{ik} x_i y_k = 0$ とする。 $\sum_{i}\left(\sum_{k} a_{ik} y_k \right) x_i = 0$ より $\sum_{k} a_{ik} y_k = 0,\ \forall\,i$ であるので $a_{ik} = 0,\ \forall\,i,k$ である。

(d) $\Rightarrow$ (b) $z \in L_1 \otimes_K L_2$ s.t. $j(z) = 0$ とする。 $L_1$ と $L_2$ の基底を用いて $z = \sum_{i,k:\text{finite}} a_{ik} x_i \otimes y_k$ と書くと、 $0 = j(z) = \sum_{i,k:\text{finite}} a_{ik} x_i y_k$ であるので、 $a_{ik} = 0$ が従う。よって $z = 0$ である。

$L_1/K$: 有限次拡大とする。 $[L_1:K] = n$ とし、 $L_1$ の $K$ 上の基底を $x_1,\cdots,x_n$ とする。
(c) $\Rightarrow$ (e) $L_2$ の基底 $\{y_k\}$ をとると、 $\{x_i y_j\}$ が $L_1 L_2$ を生成し、また $\{x_i\}$ は $L_2$ 上線型独立であるので、 $L_2$ 上の $L_1 L_2$ の基底となる。よって $[L_1 L_2:L_2] = n$ である。

(e) $\Rightarrow$ (c) $L_1$ の $K$ 上の基底を $x_1,\cdots,x_n$ とすると、 $L_2$ の $K$ 上の基底 $\{y_k\}$ に対し $\{x_i y_k\}$ は $L_1 L_2$ を生成する。よって、 $\{x_i\}$ の部分集合は $L_2$ 上の $L_1 L_2$ の基底となるが、仮定より $n$ 個の元で基底をなすので、 $\{x_i\}$ のすべてで基底をなす。故に、 $\{x_i\}$ は $L_2$ 上線型独立である${}_\blacksquare$