らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

Galois理論(49)―ガロア群の計算例

例1

標数0の体或は、標数が2ではない有限体の代数拡大体を考える。
$[L:K] = 2$ とする。Galois理論(46)―正規拡大補足(2)と少し整理 - らんだむな記憶で見たように、2次拡大の場合には正規拡大となることに注意しよう。
この時、ある $\alpha \in L\backslash K$ がとれて、その最小多項式 $P_\min(\alpha,K)$ の次数は2となる。 $P_\min(\alpha,K) = X^2 + aX + b$ と考えると、その判別式 $\Delta = a^2 - 4b$ を考えると、 $L = K(\sqrt{\Delta})$ になっている。
飽きたらやめようGalois理論(20)―分離性の同値条件 - らんだむな記憶の定理により $\sqrt{\Delta}$ が $K$ 上分離的であれば、 $L/K$ は分離拡大になり、従ってガロア拡大になる。
実際、$P_\min(\alpha,K)$ が重根を持つとすると、 $P_\min(\alpha,K)(X) = (X-\alpha)^2 = X^2 - 2\alpha X + \alpha^2$ であるが、標数が2でない場合、 $X$ の係数が $0 \neq -2\alpha \in L\backslash K$ となり、 $P_\min(\alpha,K)$ が $K[X]$ の多項式にならない。よって重根を持たず分離的である。*1
$\mathrm{Gal}(L/K)$ を考えると、 $\sqrt{\Delta} \mapsto \sqrt{\Delta}$ つまり恒等写像か、 $\sqrt{\Delta} \mapsto -\sqrt{\Delta}$ の根の真の置換を行う写像かの2通りしかない。よって、 $\mathrm{Gal}(L/K)$ は位数2の巡回群となる, i.e. $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \Z/2\Z$

○補足
標数が0でない場合には、例えば $K= \mathbb{F}_3$ とすると、 $X^2+X+2$ は既約である。 $X^2+X+2=0 \Rightarrow (X+2)^2 + 1 = 0 \Rightarrow (X+2)^2 = 2 \Rightarrow X = 1 \pm \sqrt{2}$ となる。この場合、 $\Delta = 2$ である。根の公式で出てくる判別式の式にあてはめると、 $1^2-4\cdot 2 \equiv -7 \equiv 2$ なので、辻褄は合っている。
標数2の場合、例えば $K= \mathbb{F}_2$ だと、既約多項式は $X^2+X+1$ であるが、この場合 $\Delta = 1^2 - 4\cdot 1 = 1$ である。何か変な気持ちになるが根の公式を導こうとすれば分かる。 $X^2+X+1 = (X+a)^2 - a^2 + 1$ と変形しようにも、 $a \in \mathbb{F}_2$ では求まらないのである。

例2

標数が0の体或は標数が2でも3でもない有限体の代数拡大体を考える。
$[L:K] = 3$ とする。この時、自動的には正規拡大にはならない。
$L = K(\alpha)$, ここで $\alpha$ は3次の既約多項式 $P$ の根、となる。
飽きたらやめようGalois理論(21)―完全体 - らんだむな記憶の定理より(標数0の体或は有限体の代数拡大であるので) $L/K$ は分離拡大体となる。

●ケース1― $P$ が $L$ で分解する
Galois理論(40)―正規拡大 - らんだむな記憶の定理より $L/K$ は正規拡大である。 よって、 $L/K$ は正規かつ分離拡大であるのでガロア拡大である。
飽きたらやめようGalois理論(42)―ガロア群とArtinの定理 - らんだむな記憶からもガロア群は元の個数が3となり、必然的に巡回群となる。よって、 $\mathrm{Gal}(L/K) \simeq \Z/3\Z$

●ケース2― $P$ が $L$ で分解しない
$L=K(\alpha)$ として $\alpha$ の最小多項式 $P_\min(\alpha,K)$ の根を $\alpha_1 (= \alpha),\alpha_2,\alpha_3$ とする。最小多項式が分離的となるのでこれらの3根は互いに異なる。 $M = K(\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3)$ を splitting field とする*2。定義より $M/K$ は正規拡大であり、よってガロア拡大である。
$\mathrm{Gal}(M/K)$ は $\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3$ の入れ替えを行うので $\mathrm{Gal}(M/K) \hookrightarrow S_3$ となる。 $\#S_3 = 3! = 6$ であるが、飽きたらやめようGalois理論(41)―ガロア拡大 - らんだむな記憶より $\#\mathrm{Gal}(M/K) = [M:K] = 6$ であるので、 $\mathrm{Gal}(M/K) \simeq S_3$ となる。

*1:このような計算をしなくても、飽きたらやめようGalois理論(21)―完全体 - らんだむな記憶より有限体の代数拡大体として分離性が従う。

*2:飽きたらやめようGalois理論(4)―根体と分解体 - らんだむな記憶で見たように最小分解体の拡大次数 $\leq 3! = 6$ となるが、今回のケースでは3ではないので6となる。