らんだむな記憶

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Galois理論(42)―ガロア群とArtinの定理

Def

$L/K$: ガロア拡大とする。 $G = \mathrm{Gal}(L/K) := \mathrm{Aut}(L/K)$ をガロア群と呼ぶ${}_\square$

Remark

Galois理論(41)―ガロア拡大 - らんだむな記憶の最後の主張を書き直すと $L^{\mathrm{Gal}(L/K)} = K$ となる。

Theorem (Artin)

$L$: 体。 $G \subset \mathrm{Aut}(L)$
(1) $G$ の $L$ への作用で現れる $G$-軌道が有限軌道(軌道の元が有限個)である時、 $L$ は $L^G$ ($L$ の $G$-不変体 or 固定体)のガロア拡大である。
(2) $|G| = n$ の時、 $[L:L^G] = n$ であって、 $G$ はガロア群となる。

Remark

$G$-軌道の元の有限性は $G$ 自身の有限性を意味しない。
$L/K$ をガロア拡大とし、 $G = \mathrm{Gal}(L/K)$ をガロア群とする。 $\alpha \in L$ をとると、 $P_\min(\alpha,K)$ の分解体は $K$ の有限拡大体となる。この時、 $G$ の $L$ への作用で現れる個々の $G$-軌道は有限個の元を持つ。 $\alpha$ の $G$-軌道 $O(\alpha)$ を考えると、 $g \in G$ は $\alpha$ を $P_\min(\alpha,K)$ の別の根にうつすので、 $O(\alpha)$ は $P_\min(\alpha,K)$ の根からなり、有限個の元からなる。
しかし、 $G$ そのものは無限群であり得る。例えば、 $K = \mathbb{F}_p$, $L=\bar{\mathbb{F}}_p$ の時に起こる*1

proof of Theorem

(1) 任意の $\alpha_1 \in L\backslash L^G$ をとる。 $O(\alpha_1) = \{\alpha_1, \cdots, \alpha_k\}$ とする。(仮定より軌道の元は有限個)
ここで、 $\alpha_j \in L\backslash L^G$ である。(ある $g \in G$ に対して、 $\alpha_j = g\cdot \alpha_1$ であるが、 $\alpha_j \in L^G$ とすると、 $g\cdot \alpha_1 = \alpha_2 = g\cdot \alpha_2$ となるが、これは体上の同型写像 $g$ の単射性に反する。)
次に、 $P(X) = \prod_{i=1}^k (X - \alpha_i)$ とおく。 $\alpha_j = g_j\cdot \alpha_1$ とすると、 $h\cdot \alpha_j = (hg_j)\cdot \alpha_1 \in O(\alpha_1)$ であるので、 $G$ の作用で $\alpha_i$ は $\alpha_j$ にうつるだけであることが分かる。よって、 $G$ の作用で $P$ は不変である。よって、 $P \in L^G[X]$ であることが分かる。しかし、その根はすべて $\not\in L^G$ であるので、 $P$ は $L^G$ 上の $\alpha_1$ の最小多項式であることが分かる。 $\alpha_1 \in L\backslash L^G$ は任意であったので、 $L/L^G$ は正規拡大であることが分かる(Galois理論(40)―正規拡大 - らんだむな記憶)。また、 $P$ の根はすべて異なることから $L/L^G$ は分離拡大でもある。従って、 $L/L^G$ はガロア拡大である。

Lemma

$G \subset \mathrm{Gal}(L/K)$ に対して $L^G$ は体である。

proof

まず $1 \in K$ なので、 $1 \in L^G$ である。 $0 \neq x \in L^G$ をとる。 $x \in L$ でもあるので、 $x^{-1} \in L$ がとれる。 $g \in G$ は体の同型写像であるので、 $1 = g\cdot (xx^{-1}) = (g\cdot x)(g\cdot x^{-1}) = x(g\cdot x^{-1})$ となり、 $g\cdot x^{-1} = x^{-1}$ を得る${}_\blacksquare$

*1:らしい