らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

Galois理論(41)―ガロア拡大

ガロア拡大...
きたか…!!
  ( ゚д゚) ガタッ
  /   ヾ
__L| / ̄ ̄ ̄/_
  \/   /

Def

ガロア拡大とは正規かつ分離拡大のことを言う。

Theorem

$L/K$: 有限次拡大とする。この時、以下が成立する。
$\#(\mathrm{Aut}(L/K)) \leq [L:K]$

等号は、 $L$ がガロア拡大の時のみに成立する${}_\square$

「体とガロア理論」§3.1 定理3.3である。或はE. Artinの「ガロア理論入門」の第2章定理13とその系が相当する。
Galois理論(42)―ガロア群とArtinの定理 - らんだむな記憶で導入する記号と用語を用いると、ガロア拡大の場合には $\#\mathrm{Gal}(L/K) = [L:K]$ ということで、「有限次ガロア拡大の場合にはそのガロア群は有限群であり、位数は拡大次数に等しい」という内容になる。

Zorn補題により以下の補題が示せる。*1

Lemma

$L/K$: 代数拡大。 $C$: 代数閉体とする。
この時、 $\varphi \in \mathrm{Hom}(K,C)$ は $\bar{\varphi} \in \mathrm{Hom}(L,C)$ に拡張できる。つまり、ある $\phi \in \mathrm{Hom}(L,C)$ がとれて $\phi|_{K} = \varphi$ とできる ${}_\square$

Remark

$L/K$: 正規拡大とする。
(1) $K \subset L_1,L_2 \subset L$ なる部分体に対し、$K$-準同型 $\varphi: L_1 \overset{\sim}{\to} L_2$ があるとする。この時、 $\varphi$ は拡大 $\bar{\varphi} \in \mathrm{Aut}(L/K)$ を持つ。
∵) $\varphi: L_1 \to \bar{K}$ と見ると、上の補題により $\phi: L \to \bar{K}$ へと拡張できる。 $\phi|_{L_1} = \varphi$ なので $\phi$ は $K$ を不変にする。よって、 $\phi \in \mathrm{Hom}_K(L,\bar{K})$ である。Galois理論(40)―正規拡大 - らんだむな記憶の定理の(3)より $\phi(L) = L$ となるので、 $\phi \in \mathrm{Aut}(L/K)$ である。

(2) $\mathrm{Aut}(L/K)$ は $K[X]$ の任意の既約多項式の根上に推移的に作用する。
∵) ある既約多項式の根 $\alpha, \beta \in L$ をとると、飽きたらやめようGalois理論(8)―stem fieldの一意性 - らんだむな記憶より、 $K[\alpha] \simeq K[\beta]$ であった。この同型を与える写像を $\varphi \in \mathrm{Hom}_K(K[\alpha],\bar{K})$ とする。先の補題により、これは $\bar{\varphi} \in \mathrm{Hom}_K(L,\bar{K})$ に拡張できるが、 $L$ の正規性により、 $\bar{\varphi} \in \mathrm{Aut}(L/K)$ となる。 $\varphi(\alpha) = \beta$ なので $\bar{\varphi}(\alpha) = \beta$ である。

(3) $\mathrm{Aut}(L/K)$ が $\alpha \not\in K$ を固定する時、 $\alpha$ は $K$ 上純非分離的である。
∵) $\alpha$ の最小多項式 $P_\min(\alpha,K)$ の他の根を $\beta \in L$ とする($L$ は $P_\min(\alpha,K)$ の分解体でもあった)。 $\varphi: K[\alpha] \overset{\sim}{\to} K[\beta]$ をとると Remarkの(2)によって $\bar{\varphi}(\alpha) = \beta$ となるような $\bar{\varphi} \in \mathrm{Aut}(L/K)$ へと拡張できるが、仮定により $\bar{\varphi}(\alpha) = \alpha$ であるので、 $\alpha = \beta$ となり、 $P_\min(\alpha,K)$ は $\alpha$ を $\deg(P_\min(\alpha,K))$ 重複として持つ。よって、 $\alpha$ は純非分離的である。

特に、(3)より、 $L/K$ がガロア拡大の時、 $\mathrm{Aut}(L/K)$ が固定する元は純非分離的かつ分離的(ガロア拡大、つまり分離拡大の元だから)であるので、 $K$ の元しかないことになる。よって、 $L^{\mathrm{Aut}(L/K)} = K$ である。ここで、 $X^G = \{x \in X;\ g\cdot x = x,\ \forall\,g \in G\}$ である。

*1:雰囲気的にはかなり Hahn-Banach の定理「部分空間上の有界線型汎函数は全空間上の有界線型汎函数に拡張できる」を感じさせる。最後に超越的な帰結を導くために Zorn補題を使うのはこれ系では仕方ないか。