らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

飽きたらやめようGalois理論(38)―原始元定理

Theorem (Artin)

$L/K$ を有限次分離拡大とする。この時、有限個の部分拡大しか存在しない${}_\square$

これは「体とガロア理論」§2.11の定理2.56の強い形でもある。
$L \supset E \supset K$ をとって、テンソル積を考えると、 $\bar{K} \otimes_K L \supset \bar{K} \otimes_K E$ となるが($K$ が体であることに注意)、飽きたらやめようGalois理論(37)―分離性と係数拡大の被約性 - らんだむな記憶の定理を使って、 $\bar{K}^n \supset \bar{K}^m $ と見做すと、このような部分体を張る基底 $e_i = (0,\cdots,0,1,0,\cdots,0)$ の組み合わせは有限個しかないということが証明のスケッチのようだ。

Cor (原始元定理)

$L/K$ を有限次分離拡大とする。この時、 $\exists\,\alpha \in L \ \text{s.t.}\ L = K(\alpha)$

「代数概論」§4.4 定理4.9である。
また、この定理で言うような $\alpha$ を原始元 (primitive element) と呼ぶ。

proof

まず、 $L\,(,K)$ が無限体とする。
$L$ が原始元を持たないとする。すると任意の $\beta \in L$ に対して、 $K(\beta)$ は $L$ そのものにはならず、従って proper な部分体である。$L = \bigcup_{\beta \in L} K(\beta)$ とかけるので、 $L$ は proper な部分体の union である。ところで、上記定理より $L$ の properな部分体は $M_1,\cdots,M_r$ のように有限個で列挙できるので、 $L = \bigcup M_i$ ということになる。しかしながら、無限体上のベクトル空間は真部分空間の有限個の合併では表現できないので矛盾である。*1

次に、$L\,(,K)$ が有限体とする。飽きたらやめようGalois理論(16)―有限体再考 - らんだむな記憶より、$L^\times$ は有限群なので適当な生成元 $\alpha \in L$ によって生成される。つまり $L = \{0,\alpha,\cdots,\alpha^n\}$ と書ける。$K(\alpha)$ は $L$ の部分体であり、$\{0,\alpha,\cdots,\alpha^n\} \subset K(\alpha)$ であるので、 $L = K(\alpha)$ である${}_\blacksquare$

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関連するようなネタがac.commutative algebra - Is there a field which is the union of finitely many proper subfields? - MathOverflowにある。証明の前半にようにproperな部分体の合併が体になることは一般には起こらない。どこかのサイトにもあったが、 $\Q(\sqrt{2}),\Q(\sqrt{3}) \subsetneq \Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ であって、 $\sqrt{2} + \sqrt{3} \not\in \Q(\sqrt{2}) \cup \Q(\sqrt{3})$ なので $\Q(\sqrt{2}) \cup \Q(\sqrt{3}) \neq \Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ である。

*1:ということの丁寧な説明がRonald SolomonのAbstract Algebra (Pure and Applied Undergraduate Texts)のp.214あたりから書いてある