らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(19)―分離的

先の命題の $Q$ に注目すると以下の性質があった。
$Q$ が既約で $(Q,Q^\prime) = 1$ ならば $Q$ は重根を持たない。つまり、 $Q$ の根はすべて異なり、splitting field の中で $\mathrm{deg}(Q)$ 個の値として得られる。

Def

$P \in K[X]$ を既約多項式とする。
$P$ が分離的であるとは、 $(P,P^\prime) = 1$ の時を言う。
$P(X) = Q(X^{p^r})$ として(このような $r$ として最大のものをとる)、 $d_{sep}(P) := \mathrm{deg}(Q)$ とおく。($Q$ を被約多項式*1、 $d_{sep}(P)$ を被約次数、 $r$ を被約指数と呼ぶ)
$d_i(P) := \frac{\mathrm{deg}(P)}{\mathrm{deg}(Q)} (= p^r)$ とおく。(非分離次数)
$\mathrm{deg}(P) = d_i(P)$ の時、 $P$ は純非分離的と言う${}_\square$

Remark

$P$ が純非分離的である時、 $Q(X) = X - a$ の形になるので、 $P(X) = X^{p^r} - a$ となる。

Remark

標数0の体の場合、すべての既約多項式は分離的であるので、上記のような概念は標数 $p$ の体の時にのみ意味を持つ。
∵) $K$ を標数0の体とする。 $K[X] \ni P(X) = \sum_{i=0}^n a_i X^i,\ a_n \neq 0$ を既約多項式とする。 $P^\prime(X) = \sum_{i=1}^{n}i a_iX^{i-1}$ であって、 $\deg(P) > \deg(P^\prime)$ である。 $\theta \in \bar{K}$ を $P$ の重根とすると、 $\theta$ は $P^\prime$ の根でもある。しかし、 $P = a_n P_\min(\theta,K)$ であるので、 $P^\prime = 0$ とならざるを得ない。よって、 $i a_i = 0,\ 1 \leq i \leq n$ である。特に $n a_n = 0$ であるのだが、 $K$ の標数は0であるので $n \neq 0$ であり、$a_n = 0$ となるがこれは矛盾である${}_\blacksquare$

Def

$L/K$ を代数拡大とする。
$\alpha \in L$ が分離的(resp. 非分離的)であるとは、 $\alpha$ の最小多項式 $P_\min(\alpha,K)$ が分離的(resp. 非分離的)である時を言う${}_\square$

要するに、$\alpha$ が分離的とは、その最小多項式がばらばらの根を持つ時である。非分離的ならその最小多項式が重根を持ち、純非分離的なら重根しか持たない。

Prop

$\alpha \in K$ を分離的とする。
この時、 $|\mathrm{Hom}_K(K(\alpha), \bar{K})| = \deg(P_\min(\alpha, K))$ が成立する。
一般に、 $|\mathrm{Hom}_K(K(\alpha), \bar{K})| = d_{sep}(P_\min(\alpha, K))$ が成立する。

proof

$\alpha$ の最小多項式を $P_\min(\alpha, K)$ とする。 $P_\min(\alpha, K)$ は分離的なので、 $\bar{K}[X]$ にて $\prod_{j=1}^n(X-\alpha_j)$ と分離する。ここで、 $\alpha_j \in \bar{K}$ は互いに異なる。
$\varphi \in \mathrm{Hom}_K(K(\alpha), \bar{K})$ は $\alpha$ を $P_\min(\alpha, K)$ の根にうつすが、候補は $\alpha_1,\cdots \alpha_n$ の $\deg(P_\min(\alpha, K))$ 通りである。また、飽きたらやめようGalois理論(8)―stem fieldの一意性 - らんだむな記憶で見たように、それぞれの準同型写像は存在する。
$P_\min(\alpha, K)$ は分離的なので、被約多項式 $Q$ は $Q = P_\min(\alpha, K)$ にとれ、非約指数も $r = 0$ となる。
よって、 $\deg(P_\min(\alpha, K)) = \deg(Q) = d_{sep}(P_\min(\alpha, K))$ である${}_\blacksquare$

Remark

純非分離拡大の例は $K$: 標数pの体として、飽きたらやめようGalois理論(33)―被約環と局所環 - らんだむな記憶の $X$: 不定元に対する有理函数体の拡大体 $K(X)/K(X^p)$ である。

*1:reduced polynomial