らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(9)―代数的閉包を考える

代数閉体に思いを馳せたい。

素数 $p$ に対し、 $\mathbb{F}_p$ のように標数 $p$ の体が存在する。
さて、任意の体はZorn補題を使うことで代数的閉包を持つことが示せる。体 $K$ の代数的閉包を $\bar{K}$ と書こう。 $\bar{K}$ の標数は何であろうか?
これは簡単である。自然な埋め込み写像によって $K \ni 1 \mapsto 1 \in \bar{K}$ であるが、 $n < p$ に対しては、 $K \ni n\cdot 1 \mapsto n\cdot 1 \in \bar{K}$ であるが $n = p$ で消える。要するに $\bar{K}$ の標数は $p$ である。
このことから任意の素数 $p$ に対し、標数 $p$ の代数閉体が存在することが分かる。代数閉体の恐らくは最も有名な例が $\C$ である(代数学の基本定理)ことから、どうにもこれはもやもやするがそういうことになるだろう。

さて、 $\C = \R[\sqrt{-1}]$ なので、 $\bar{\R} = \C$ であるが、$\Q$ の代数的閉包 $\bar{\Q}$ はどういうものであろうか?既約多項式 $X^2 + 1$ を考えることで、 $\Q[\sqrt{-1}] \subset \bar{\Q}$ であることは分かる。 $\bar{\Q} = \C$ であろうか?これは一息ついて考えるとそうではないことが分かる。
仮にそうだとすると、$\C \subset \bar{\Q}$ であるので $\pi \in \C$ を考えると、$\pi \in \bar{\Q}$ となる。一方、 $\pi$ は $\Q$ 上超越的であることと、 $\bar{\Q}$ は $\Q$ の代数拡大であることが矛盾することが分かる。よって、$\bar{\Q} \subsetneq \C$ なのである。 $\bar{\Q}$ がどういうものかは分からないが、 $\Q[\sqrt{-1}]$ よりは大きくて $\C$ よりは小さい何か、ということになる。