らんだむな記憶

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飽きたらやめようGalois理論(7)―分解体の拡大次数を考える

「代数概論」第V章 例2.11より。
$K = \Q,\ f(X) = X^3 - 5$ についての分解体。Eisensteinの既約判定法を $p=5$ に対して使うと $f$ は $\Z[X]$ で既約、従ってGaussの補題より $\Q[X]$ で既約であることが分かる。
根は $\omega = \frac{-1 + \sqrt{-3}}{2}$ として、 $\C$ の範囲で $\sqrt[3]{5},\sqrt[3]{5}\,\omega,\sqrt[3]{5}\,\omega^2$ である。

まず、$L = \Q[\sqrt[3]{5}]$ とすると、 $L[X]$ 内では $(X - \sqrt[3]{5})(X^2 + \sqrt[3]{5}X + \sqrt[3]{5}^2)$ までは分解できるがこれ以上はできない。 $L$ で分解できるとすると $\omega \in L$ 従って $\sqrt{-3} \in L$ となるがこれは無理である。というのも、 $\Q \subset \Q[\sqrt{-3}] \subset L$ となるが、 $f \in \Q[X]$ の既約性より $[L:\Q] = 3$ であり、$X^2 + 3 \in \Q[X]$ の既約性より $[\Q[\sqrt{-3}]:\Q] = 2$ であることになるので $[L:\Q] = [L:\Q[\sqrt{-3}]]\,[\Q[\sqrt{-3}]:\Q]$ を考慮すると $[L:\Q[\sqrt{-3}]] = \frac{3}{2} \not\in \Z$ となり不合理である。
従って、 $X^2 + \sqrt[3]{5}X + \sqrt[3]{5}^2$ は $L[X]$ で既約であり、$M = L[\sqrt{-3}]$ とすると、 $[M:L] = 2$ となる。
よって、 $[M:\Q] = [M:L]\,[L:\Q] = 2 \times 3 = 6$ であり、 $M = \Q[\sqrt[3]{5}][\sqrt{-3}] = \Q[\sqrt[3]{5},\sqrt{-3}] = \Q(\sqrt[3]{5},\sqrt{-3})$ である。
この $M $ が $f$ についての分解体であるがその拡大次数は今みたように $6$ であり、 $\mathrm{deg}(f) = 3$ であることから、$3!$ で抑えられている。(というか一致)

飽きたらやめようGalois理論(4)―根体と分解体 - らんだむな記憶で触れた定理の分解体の拡大次数の評価が階乗を使うもので随分粗い評価にも見えたわけだが、別にそういうわけでもないことが分かる。
根を1つ取り出すと $f$ の既約成分の次数が1下がり、更に根を1つ取り出すと既約成分の次数が更に1下がりと、体の単拡大に合わせて1つずつしか根が抽出できない場合には、拡大次数の積み重ねが $d \times (d-1) \times (d-2) \times \cdots = d!$ になってしまうのである。1回の単拡大で一気に複数の根が抽出できれば既約成分の次数が一気に下がるので $d!$ よりも真に小さくなる。