らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

圏論(27)と宇宙!

Mac Lane本のユニバースの定義には、「いくらか冗長な」という表記がある。
例えば、性質(v)は冗長... というか少なくとも、より小さな仮定から導くことができる。これを見てみよう。

その前に、Grothendieck universe - Wikipedia, the free encyclopediaを見る。
性質として、以下が挙げられている。
(vi)$\{x_\alpha\}_{\alpha \in I}$ を $U$ の元の族とする時、 $I \in U$ であれば $\bigcup_{\alpha \in I} x_\alpha \in U$ である。

また、同ページ内のPropositionを見る。

Proposition

$x \in U$ かつ $y \subset x$ であれば、 $y \in U$ である。

Proof.

$y \subset x$ より、$y \in \mathcal{P}(x)$ である。*1
$x \in U$ であったので、性質(iii)の前半より $\mathcal{P}(x) \in U$ である。
よって、 $y \in \mathcal{P}(x) \in U$ であるので、性質(i)より $y \in U$ である。${}_\blacksquare$

この命題の系として性質(v)が得られることを見る。
まず、性質(ii)において $u = v$ とおくことで、 $u \in U \Rightarrow \{u\} \in U$ となることに注意する。

Cor1

性質(i)(ii)(iii)の前半(iv)(vi)のもと、 $f: a \to b$ が全射的関数で $a \in U$ かつ $b \subset U$ ならば $b \in U$ である。

Proof.

$\tilde{a} = f(a)$ とおくと仮定より $b = \tilde{a}$ である。特に、 $b \subset \tilde{a}$ である。よって、 $\tilde{a} \in U$ を示せば前述のPropositionより $b \in U$ が従う。
また、仮定より $b \subset U$ なので、 $\tilde{a} \subset U$ となる。従って、任意の $x \in a$ に対して、$f(x) \in U$ となるので、 $\{f(x)\} \in U$ を得る。 $\tilde{a} = f(a) = \bigcup_{x \in a} \{ f(x) \}$ と書けるが、仮定より $a \in U$ であったので、(vi)より $\tilde{a} \in U$ を得る。${}_\blacksquare$

更に、性質(iii)の前半、即ち
(iii')$x \in U$ ならば $\mathcal{P}(x) \in U$
を考えると、

Cor2

性質(i)(ii)(iii')(iv)(vi)のもと、 $x \in U$ ならば $\bigcup x \in U$ である。

を得る。よって、性質(iii)も小さな仮定に置き換えられる。要するに、(iii)+(v)は(iii')+(vi)から導くことができる。

Proof of Cor2.

(i)と(iii')より、$x$ の任意の部分集合 $y$ は $y \in \mathcal{P}(x) \in U$ であるので、 $y \in U$ である。
$\mathcal{P}(x) =: I = \{ y \}_{y \in \mathcal{P}(x)}$ と書き直す。*2
$\{ y \}_{y \in \mathcal{P}(x)}$ は $U$ の元の族である。
この時 $\bigcup x = \bigcup_{y \in I} y$ と書けるが、 $I = \mathcal{P}(x) \in U$ であることから、性質(vi)により $\bigcup x \in U$ が従う。${}_\blacksquare$

ということで、Mac Lane本の性質(i)(ii)(iii)(iv)(v)は性質(i)(ii)(iii')(iv)(vi)で置き換えても良いことが分かった。(ii)ももっと絞れるようだが面倒なので今はやめておこう。

*1:$y$ は $x$ の部分集合であるというのを2通りの書き方をしているだけ

*2:各 $y$ は $x$ の部分集合である。また、 $I$ という書き直しはまったく不要だが添え字集合の雰囲気を出すためだけに alias として用意した。