らんだむな記憶

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局所正則性

Schrödinger方程式(2) - らんだむな記憶で少し触れた$L^p$性と局所正則性だが、$L^p (p > 2)$だと微分可能性が高まるという意味ではなさそうに思えてきて仕方ない。
ずっとSobolev空間の意味での滑らかさを「正則性」と思っていたが、この場合は特異性の緩やかさくらいにとらえたほうが良さそうに思えてきた。

$\mathbb{R}^d (d \ge 1)$における$\frac{1}{|x|^k}$という特異性を持つ函数を原点周りで積分することを考える。極座標に変換すると、
\begin{equation}
(d-1) - kp > -1
\end{equation}

の時$p$乗可積分となる。$k$について整理すると、
\begin{equation}
k < \frac{d}{p}
\end{equation}

となる。
もともと、$L^2$に属する函数の場合、$\frac{d}{2} - \varepsilon$程度の尖がり具合まで許されるわけだが、それを初期値に持つ何らかの方程式の解が時間発展で局所$L^p (p > 2)$性を持つとなると、例えば$p=3$とすると、尖った部分のデータは高々$\frac{d}{3} - \varepsilon$程度しか許されなくなり指数が小さくなっている。あまり尖った形状は許されなくなる。
微分可能ということも結局は尖り具合や不連続性の具合が激しいとあまり微分できないということなので、「正則性」という言葉は特異性の少なさとして解釈しておいたほうが良いのかもしれない。
まぁ、そもそも "regularity" であって "smoothness" ではないしなぁ。"regular" って難しい...。

なお、Schrödinger方程式の場合、初期データが$L^2$でも、時間発展させると$H_\mathrm{loc}^{1/2}$というようにSobolevの意味での滑らかさの増大が得られるらしい。こっちのほうが正則性としてしっくりくるんだが。

―――――・・・

$H_\mathrm{loc}^{1/2}$が従うような主張をする場合、タイトルに「local smoothing properties」が入っていたりするようだ。
いつものことだけど、加藤先生は1983年にKdV方程式に対するこういう性質を示したそうだ: On the Cauchy problem for the (generalized) Korteweg–de Vries equation
pdfも見つからなくて詳細は不明だけど。

ざっと見ても、http://www.ams.org/journals/jams/1988-01-02/S0894-0347-1988-0928265-0/S0894-0347-1988-0928265-0.pdfの時点で、時間に依存するポテンシャルを持つSchrödinger方程式に対する解の局所正則性への言及があるので、大分昔からこの性質は研究されているようだ。

http://www.math.northwestern.edu/~jwunsch/smoothing-loss.pdfの序文によると、前述の加藤先生のKdV方程式に対する平滑化効果の研究に始まって、Schrödinger方程式の平滑化効果が研究がなされた感じだろうか。