らんだむな記憶

blogというものを体験してみようか!的なー

特異値分解

特異値分解 - Wikipediaというのがあるようだ。
なんか知らんけど、行列におけるスペクトル分解的なやつは実用上で大活躍のようだ。よく知らんけど。

函数解析におけるコンパクト作用素は有限次元ベクトル空間上の行列の宜しい拡張に相当していて、色々似通った性質を持っている。例えば、コンパクト作用素のスペクトルは、0以外は固有値でありその固有次元は有限である(Riesz-Schauderの定理)というのは、まさに行列的である。

ということで、Amazon.co.jp: I: Functional Analysis, Volume 1 (Methods of Modern Mathematical Physics): Michael Reed, Barry Simon: 洋書のTheorem VI.17 (canonical form for compact operator)やAmazon.co.jp: Spectral Theory and Differential Operators (Oxford Mathematical Monographs): D. E. Edmunds, W. D. Evans: 洋書のTheorem II.5.7が特異値分解にあたる定理だ。共に古いが頼りになる良書である。

定理

$A$をHilbert空間$\mathscr{H}$上のコンパクト作用素とする。この時、正規直交系$\{ \psi_n \}_{n=1}^\infty,\ \{ \phi_n \}_{n=1}^\infty$と正の数列$\{ \lambda_n \}_{n=1}^\infty,\ \lambda_n \to 0$がとれて、
\begin{equation}
A = \sum_{n=1}^\infty \lambda_n (\psi_n\,|\,\cdot \,) \phi_n
\end{equation}
と表すことができる。${}_\square$

ここで、$\lambda_n$が特異値、である。
行列で考えるなら、正規直交系$\{ \psi_n \}_{n=1}^N$をかき集めて作った行列$V^*$はユニタリ行列になるし、正規直交系$\{ \phi_n \}_{n=1}^N$をかき集めて作った行列$U$もユニタリ行列になる。$\{ \lambda_n \}_{n=1}^N$を対角成分に並べて作った対角行列を$\Sigma$とすると、行列の形で書くと、
$$A = U \Sigma V^*$$
ってなるよね、ということだろう。
$|A| := \sqrt{A^* A}$と書くと、$\{ \lambda_n \}$は$|A|$の固有値になっている。また、$A \ge 0$というように正値であれば(正確には対称正値)、$|A| = A$になってしまうので、特異値は単に$A$の固有値である。

自己共役(エルミート)なコンパクト作用素の場合、形式的に$\psi_n = \phi_n$にした形で
\begin{equation}
A = \sum_{n=1}^\infty \mu_n (\phi_n\,|\,\cdot \,) \phi_n
\end{equation}
というようにスペクトル分解(対角化)できてしまい、線型代数の「エルミート行列はユニタリ行列で対角化可能」という定理に対応する。

コンパクト作用素は有限と無限の架け橋として色々面白い性質を持っているものだ。